ねぇ、パパ?
なんです?グラシア。
今日の集まりはなんなの?
あぁ、君の妹たちのお披露目のような物です。
みんなでこう…機能説明とか雑談をして…まぁ、どんな感じなのかわかってもらおうというのが趣旨ですよ。
みんな起動してから会うのは初めてでしたよね?まぁ、まずは無難に自己紹介から行きましょうか。
はい。GTR(グラシア・タイプ・ロボット)初号機、グラシア。よろしくね。外見設定は低いけど、いちおーみんなのおねぇさんってことになるのよね?
そうねぇ…機能的には全方位センサーとホヴァー駆動…超精細立体構造マッピングシステムと記憶装置の大容量化…衛星とのリンクシステムと全種類のヴィークルドライビングプログラムくらいかな?
補足するなら…君たちのトレードマークとも言うべきその大きな脚部以外は、現行のどのドロイドよりも人間に近い動きを再現しているよ。君は。
2号機、デルフィンです。完全防水の耐圧フレームに高圧環境対応型の強化繊維とスキンを装備してます。
そのため、お姉さんほど自然な動きが望めない他、電気抵抗による発熱量が高く、それを冷却するための消費電力が多いのがネックです。
基本機能としてはアクティブ&パッシブソナーと高周波音声発振装置、200倍望遠と顕微カメラを内蔵しています。あぁ、サーチライトもついてますね。
うわ~溶けるっス~!
こらこら。…デルフィン。セパレートレッグのことは?
あぁ……。私の足はドリルボーイの部分がセパレートするの。
今あるパーツは深海作業用の海水プラント内蔵の内燃スクリュー推進器を内蔵したものと、宇宙用のジェットノズルと燃料タンクを内蔵したもの。それと今つけてる放熱器と冷却器をつけたもの。…これはお姉さんと同じ機構。
…ドリルボーイの部分?
はいはい!三号機、シエルですのー!シエルはなんと!空が飛べるのでする!
すごーい。
それで翼がついてるのね。
へへへぇ…見たい?
シエル!やめなさい!
…パパ?
…シエルはね。反重力装置と超電導ジェットで飛ぶんだけど、どっちもまだ開発途上で…。
特に反重力装置の方は高周波ハウリングを放つわ高濃度電磁波をまき散らすわで、僕たち精密機械にはかなり致命的なんだよ。
え~。じゃぁ見れないの?
抗電磁布をかぶって、ちょっと離れたところからならいいけど…。ちなみに初期起動実験のあと、ボクは実に三日間の機能停止に陥ったよ。
怖っ…。
この娘は平気なの?
もちろんシエルは抗電磁機能を内蔵してるからおっけーですよぉ。センサー類もちょー強力っスー。
……微妙に、おバカなのはやっぱり電磁波のせいなのかしら…。
…まぁ抗電磁機構内蔵って言っても完璧に遮断できるもんでもないしね。
へへ。すごいでしょ。
……ほめられてないよ。シエル。
…いいかしら?4号機、ファベルです。よろしくね。
見ての通り、外見年齢は一番上ね。追加装備はこのショベルアームとキャタピラユニット。私は力持ちなの。仕様上、最大10トンくらいまでは持ち運べるのよ。でも、それだけって訳じゃなくて、探査識別系の機能も充実してるし、私のアームはパーツを換装することで、いろんな事に使えるの。ドリルとか………高枝切り鋏とか(笑)。
ファベルは汎用性に富んでいるからね。あとは充電モードかな。
もう、おとうさんったら。今言おうと思ってたのに。私は野外活動が多いから、頭髪充電を強化してあるの。この集光ミラーに換装して………。
ギャー!なぜにシエルばっかり~?
そういう反応するからよ。
充電モードにはいると、一時間の充電で40分ほどの通常活動電力を充電できるの。………晴天の日中に限ってだけどね。
それはすごいかも。
つ~ぎ、いってみよ~。
心得た。5号機。ソルダでござる。拙者は戦闘機でござるからパワーが強いでござる。
とはいえ、そのパワーも「戦車4台分」の防御力を誇るこの皮膚装甲に邪魔されて、若干ロスが目立つでござるな。それでも、瞬間的なパワー数値はファベル姉者に劣らないのでござるよ。こんなに大きな刀もほらこのとおりでござる。
もちろん、でかくて重いだけじゃないでござるよ。ここのジャックと接続すれば1000℃までチャージアップできるでござる。
………まぁ、欠点はといえば、冷却コートがないと熱暴走を起こしてしまうところでござろうか。
ソルダの駆動繊維は、高機動なんだけど発熱量がすごくてね。しかも装甲のおかげで放熱率も低い。その放熱コートは苦肉の策なんだよ。
でも、なんかノリ的に必殺技とかもってそうね。
あるでござるよ。サンダーフラッシュにライオソード、真っ向唐竹割りに十文字斬り……………
貴方はソルダにそっくりなのね。
えっ?……アスは………その、ソルちゃんの、えと………双子ユニットです……から。
…………放置でござるか………。
がおーっ!
!!!!
シエル姉者!脅かすのはやめるでござる。
おとなしくて、引っ込み思案だね。
アスちゃんは防御壁でござるから、受動的なのでござる。
理屈はわからないでもないけど………。それにしたって、極端よねぇ?
受動的と言うよりは臆病ね。
それでも戦闘時の防御性能には影響ないのでござるよ。
地上全方位からのマシンガン斉射を、弾倉が満タン状態から空になるまでの間、防衛範囲内を守りきった実績があるでござる。
そのおっきな盾で?
アスファリヤ?
…………ふるふる……。
………ショック状態か。しかたないな、ソルダ。
心得た。
………アスちゃんは拙者と同じ駆動繊維を使っているでござるが、装甲スキンの代わりに放熱スキンをつけてるので………姉者たちにはかなわぬまでも、拙者のように放熱コートをつけずとも大丈夫なのでござる。
しかも、装甲が薄い分パワーロスが無く、結果拙者よりもパワーが強いでござる。拙者の刀よりも重いこの盾も軽々でござるよ。
防御用なのに装甲が薄いの?危なくないの?
そう思うのが素人の浅はかさというもの。
アスちゃんはそもそも一定の空間を守りきるのを目的として作られているでござるから、自分にダメージがくるようでは、そもそもダメなのでござる。
でも、あの大きな盾じゃ持ち回りが大変でしょう?
どうせ母さまの事だから、妙な機能を付けてるんでしょう。
………………………(汗)。
もちろん(笑)でござる。
今は髪に巻き付いてるでござるが………この紐は駆動繊維と拙者の皮膚装甲とを組み合わせたもので、アスちゃんはこれを自在に動かすことができるでござる。それで弾丸などの物体を叩き落とすのでござるよ。……………だれでござるか、アンド○メダなんて言ってるのは。
もちろんそれを可能にするためのセンサー類も装備されてるし、霍乱やジャミングへの対策もインプットしてあるんだ。
実戦では、アスちゃんの指揮で、拙者が動くでござるよ。
……………ハウリングシェードもあるの………。
おぉ、火炎放射器やガスなどの対策用に使うんでござったな。
まぁ、正確にはハウリングシェードの技術を転用した、防護圏発生装置なんだけど。ハウリングシェードという名称は旦……………。
ただいま!
…………誰?
見た感じ、私たちの妹よね。
間に合ったみたいね。初めまして、お姉さんたち。GTR-7、ルスキニアです。よろしく!
おーっス!
おっす。
知ってるの?
動いてるのは初めてかも。
じゃぁできたばかりなのでござるな。
3日前に正式稼働したばかりです。
ルスキニアはGTRシリーズでは初めて実用目的で作られたんだよ。
……だから、あたしには特別な新機能とかはありません。タイプ的にはグラシア姉さんに一番近いんじゃないかしら。
………実用って?
あたしは救急医療処置用なの。
事故現場や災害地なんかに、ホバーを使って急行して救助隊が到着するまでの間、被災者たちを延命しておくための応急処置をインプットされてるのよ。車とかじゃぁアレでも、あたしくらいの大きさなら大概のところには出入りできるから。………追加装備は診断用のX線アイに滅菌用パルサー、マイナスイオン噴霧機………ってかんじ。
追加装備の類がほとんどない分、ルスキニアはハード面を強化してあるんだ。別名歩くメインフレーム。
そんなわけで、あたしは2ndシステムじゃなくて、プレアデスシステムをオリジナルのまま搭載してます。
わぁ………すごいね。
………………。
どうしたの?
……あぁ、いわれてみればそうでござるな。
聞こえたの?私でも判別できなかったのに。
双子でござるゆえ、わかるでござるよ。
非科学的だわ。ドロイドなのに。
まぁまぁ。
で、なんなの?
いやなに、叔母さんだな、ということでござるよ。
お……オバサン?
あぁ、パパと同じシステムなら、パパの妹ってことになるもんね。
おばさん、おばさん。おばーさん?
最後違う!っていうか途中も!私の設定年齢はグラシア姉さんと同じなのよ。うら若き乙女に向かっておばさんないでしょ、オバサンは。
うら若き乙女とか自分で言うのもどうかと思うけど………乙女だったらそんなに青筋たてるものじゃないわ。
これこれ。……ルスキニアは確かに僕と同じシステムを積んでいるけど、機体的にはどう見たって君たちの妹だよ。娘と言ってもいいくらいさ。
でもすごいわぁ、表情とか動作がとっても自然よね。人間みたい。皮膚の温度変化まであるわよこの娘。
(コクコク。)
…………強化繊維とか、装甲とかついてないからね。今はまだデータ量の関係上グラシア姉さんの方が上だけど、すぐに追いつくと思う。
処理速度も段違いだし、応用関数も新式を入れてあるから。
………その方が、患者さんも安心……。
うん、そういうこと………安心といえば、あたしこのアンテナからα波を発信することもできたんだっけ。
正確にはα波誘発音波だね。
お!おそろいー。
シエルのからはα波は出せないけどね。ルスキニアは君たちのよい点ばかり受け継いでるんだよ。
グラシアから立体マッピングシステム。デルフィンから耐水耐圧フレーム。シエルから抗電磁機構と高感度アンテナセンサー。ファベルから新式光学変電機。アスファリヤから放熱スキンをそれぞれ受け継いでいるんだよ
…………拙者だけいいところないのでござるか………。
あ………。
……よいのでござる…父上。……所詮………戦闘員などそのようなモノでござるよ………。
(よしよし)
いやいや、そんなことはないよソルダ。
救急用の実用機に必要なかったと言うだけで、君の駆動系や装甲スキンは他に並ぶものが無いほどの性能を誇るんだよ。うん。それにほら、君には"ハイパーモード"があるじゃないか。
そうは言われても、アスちゃんは戦闘実験で成功をしているというのに拙者は………。
ハイパーモード?
戦闘実験?
あぁ、フリーランサーの中でそれぞれぴかいちと言う人を仮想敵にして、戦闘実験を行ったんだ。
ソルダは敵に勝利すること、アスファリヤは敵から自己を守り抜くことがそれぞれ条件だったんだ。
お相手は誰さまちゃんなの?
…“ジェノサイダー”…。
十六夜どのでござる。
あぁ。そりゃ無理だわ。…ってなに?アスちゃんは成功してるの!?すごい!
すごいの?
“ジェノサイダー”っていったら警察のブラッドリストにものってるくらいの怪物よ。
…何で貴女はそんなことを知ってるのかしら。機密でしょ?一応は。
ちなみに、ブラッドリストというのは、ブラックリストの中でもとりわけ取扱注意のΩΩΩ級危険人物のリストのことだよ。
範囲は全世界にまたがったモノで…まぁ、だいたい1都市に一人か二人の名が示されていると言うね。
お、パパうえも知ってるでござる。ニンニン。
…………………………。
さすがはオリジナル・システムってところかしら。
…でも、犯罪じゃないかしら。
煌一郎さんが相手じゃぁしかたないよ。あの人はっきり言って超人だもの。
あら。お姉さん、あったことあるの?
うん。“ジェノサイダー”さんにもね。っていうか、二人が喧嘩してるところみたことあるのよ。
見たい見たい!
じゃぁ私が中継するから…パパ。コードは?
今出すよ。
……。
なんて言うか…。
ヒトの戦いじゃないわね。
デルフィン姉者は身も蓋もないでござるな。
…怖い……。
怖っ!顔こわっ。
これじゃぁどっちが良い者かわからないよね。
いちおうは、どっちも良い者なんだけど。
良い者なのにブラッドリストに載るの?
まぁ、それは大人の事情という奴だよ。
ところで、ハイパーモードってなぁに?
話題かえたわね。
大人の事情?
いいじゃない。あたしも気になるな。ソルダ?
大人の事情。
…拙者はこの冷却コートを脱ぎ捨て、そこに回していた電力を使うことで、GX機関を起動させることが可能なのでござる…。
GX機関っていうのはね。“ジェノサイダー”さん用に作ったGXバスターと同じ技術で作られたものなんだ。
知ってるー。電子と陽電子の反発作用を利用して反中間子とか言う粒子を発生させるのよね。
…拙者のはそこまでいかないでござる。
反中間子を発生させちゃうと、物質中の中間子と対消滅して、機関ごと分解消滅してしまうからね。
そのGXバスターは平気なの?
大人の事情?
案外しつこいわね。
はは。まぁ、GXバスターはね。発射の瞬間、内部の壁面を電磁プラズマでコーティングするんだ。
もちろん、ものが反中間子だけに、ふつうはそれでも保たないんだけど。アレは元からエネルギーが銃口に向かう途中で反中間子が発生するわけだから、エネルギーの進行方向ってのはもう決まってるわけ。っていうか、プラズマとの消失反応で、一種爆縮みたいなことが起きるんだ。それで何とか保ってるんだよ。ちなみに、陽電子と電磁プラズマを発生させるために、一瞬…正確にはコンマ32秒でゆうに原発一機の1日分の電量が必要になるんだよ。
それをきくと、アスファリヤはすごく凄いのね。
………。
そうね。反中間子っていったら理論上あらゆる物質と対消滅するんだものね。
………。
そんなの相手に、ミッションを成功させたんだからねぇ。
…………。
ゴイスー。
………グス…。
はわっ!?
防音シャッター!
うわあぁぁん!!
す…スゴイ音量…。
よしよし、アスちゃん。よしよしでござるよー。
音響兵器なみね~。…あう、自己診断にレッドチェックが…。
あらぁ…みんな内部パーツにゆがみと亀裂がみえるわよ。オーバーホールものね。
きみもね。
いや~ん。まいっちんぐ。
……………
父様。私たちは女の子なんだから、もうちょっと気をつけてほしいわ。ファベルも。
え?あぁ…うん。でもねぇ…人間くさくなるのは良いけど、羞恥心なんて必要ないんじゃないかなぁ?
そんなことないわ。確かに羞恥のあまり活動に支障をきたすようなのは問題だけど、適度な羞恥心というのは私たちのような女の子型には必要なの。そういった愛らしい態度は、ユーザーの愛情につながるわ。
チラリズムってやつっスね?
………と、ところで、アスファリヤは落ち着いたかしら?
そうよ、どうしたの?
姉上たちが皆して褒めそやして、話を聞いてくれなかったからでござろうな。
誤解があるようだけど、GXバスターはアスファリヤとの戦闘実験の謝礼として作ったものだから、実験のときにはまだなかったんだよ。
先に言えって。(ビシィ!)
…シエル姉がつっこんだわ。
お、アスちゃんが泣きやんだでござる。
そんなに?
いや…それで泣き止んだわけじゃ…。
それよりも…本当にこの娘、戦闘機なの?
ディー姉、いじめるのはやめるでござる。
デルフィン。気持ちはわかるけど、アスファリヤが戦闘用なのは確かだよ。
ソルダもそうだけど、彼女たちだけが今の攻撃(?)で無傷なんだから。
それはそうかもしれないけど、自己表現のつたなさから感情的になって周囲に破壊を巻き散らすというのは、戦闘用云々以前に、ロボットとして問題があるわ。
まぁ、たしかに、人間のいるところであれをやったら被害甚大よね。
姉上。いかに拙者らが戦闘用だからとて、三原則は働いているでござるよ。それに、あの程度の音であれば気絶者がでるかどうかと言った程度でござる。人間は拙者らと違い柔らかいでござるからな。
たしかにそうだね。
うん。SSSのスタングレネード程度だったね。
……………ごめ……。
………まぁ、人に被害が出ないならいいわ。でも、マスターが賠償責任を負う可能性があるから、気をつけるのよ。
…………ね…さま………。こくこく
さて、綺麗にまとまったところでお開きにしよう。
まとまったのかしら?
大人の事情?
まだ言うか!